一致推定量とは?定義や不偏推定量との違いをわかりやすく解説!

統計学基礎

一致推定量とは?

一致推定量(Consistent Estimator)とは、サンプルサイズが無限に増加したときに、真の値(母数)に収束する推定量のことを指します。

数学的には、推定量 \(\hat{\theta}_n\) が母数 \(\theta\) に一致性を持つとは、以下の条件を満たすことを意味します。

$$\hat{\theta}_n \xrightarrow{P} \theta \quad (n \to \infty)$$

これは、サンプルサイズ \(n\) が増えるにつれて、\(\hat{\theta}_n\) が真の値 \(\theta\) に近づくことを意味します。

簡単に言うと?

簡単に言えば、「サンプルが十分に増えれば、推定値は真の値に限りなく近づく」という性質です。

例えば、サイコロを振ってその目の平均を計算すると、試行回数が増えるほど理論的な平均(3.5)に収束することが直感的に分かるでしょう。

これは一致推定量の一例です。

一致推定量の例

標本平均は一致推定量

母平均 \(\mu\) の推定量として、標本平均 \(\bar{X}\) を考えます。

ここで、\(X_i\) は独立同分布 (i.i.d.) であり、期待値が \(E[\bar{X}_n] = \mu\)であるとします。このとき、大数の法則により、標本平均は確率収束して母平均に一致します。

よって、標本平均は \(\mu\) の一致推定量であることが分かります。

不偏推定量との違い

不偏推定量とは?

不偏推定量(Unbiased Estimator)は、推定量の期待値が真の値に等しいことを意味します。

$$E[\hat{\theta}] = \theta$$

例えば、標本平均 \(\bar{X}\) は母平均 \(\mu\) の不偏推定量です。

一方で、一致推定量は「サンプルサイズが増えると真の値に近づく」性質を持ちますが、不偏性を持つとは限りません。

不偏推定量については、以下の記事も参考にしてください!

一致推定量は必ずしも不偏推定量ではない

一致推定量と不偏推定量の違いを具体的な例で考えてみましょう。

例えば、母分散 \(\sigma^2\) を推定する推定量として、以下の2つを考えます。

$$S_n^2 = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} (X_i – \bar{X})^2$$

$$S^2 = \frac{1}{n-1} \sum_{i=1}^{n} (X_i – \bar{X})^2$$

このうち、\(S_n^2\) は一致推定量ですが不偏推定量ではありません。

一方、 \(S^2\) は一致推定量であり、不偏推定量でもあります。

つまり、「不偏性」と「一致性」は異なる概念であり、必ずしも両立するわけではありません。

【発展】より厳密な一致推定量の定義

より厳密な一致推定量の定義を見てみましょう。推定量 \(\hat{\theta}_n\) が \(\theta\) に一致するとは、

$$\lim_{n \to \infty} P(|\hat{\theta}_n – \theta| \geq \epsilon) = 0 \quad \forall \epsilon > 0$$

この定義は、任意の小さな \(\epsilon\) に対して、サンプルサイズが大きくなると推定量が真の値から大きく外れる確率が 0 に収束することを意味します。

まとめ

今回は統計学や統計検定2級にも頻出の一致推定量について見ていきました。

なんとなくの理解では見逃されがちなこの概念ですが、統計的な推定を行う際には非常に重要です。

一致性、不偏性それぞれについて、自分で説明できるくらいの理解を目指しましょう!